マディーナの薔薇

あなたのことを想うと、すべてが記憶から消し去られ、
幻想の世界の頂きを私の心はさまよう。
たとえこれが蜃気楼であっても、私の胸の疼きは治まる・・
あなたのことを想うと、すべてが記憶から消えていく。

もし、あなたの愛と共に、一瞬一瞬を座し、立つことができたなら、
魂達のように高く高く舞い上がり、あなたの水平線上をさまようことができるなら、
手立てを見出し、あなたの志が私の中で満ち溢れることができるなら・・・
もし、あなたの愛と共に、一瞬一瞬を座し、立つことができたなら。

わかっているの、あなたにたどりつくにはもうおそすぎることを、
別れの悲しみに身を焦がし、私の心はうめきつづける。
うめきながらも、沸き起こる新たな情熱で、あなたをずっとずっと待ちつづける・・・
わかっているの、あなたにたどりつくにはもうおそすぎることを。
あなたの名を聞くだけで私の胸は、鳩の心臓のように震え上がる。
あなたの翼から、あなたにたどりつくための羽を一本、私に与えよ。
私はあなたの跡を飛びつづけよう。
あなたの名を聞くだけで私の胸は、鳩の心臓のように震え上がる。

無味乾燥な砂漠を天国へ蘇らす薔薇よ、
さあ、気を失いそうな魅惑の色で、私の心を満たしに来れ。
今はまさにその時、涙溢れる私の目に笑みを与えよ。
無味乾燥な砂漠を天国へ変える薔薇よ。

恋に狂う者のようにあなたの跡から走り続けるしもべとなろう。
真っ赤に燃え盛る薪をのみこむ暖炉のように燃えよう。
あなたなしで過ごすこの苦しい夢から救われよう。
恋に狂う者のようにあなたの跡から走り続けるしもべとなろう。

記憶の彼方で、遠く遠ざかった日々を数えながら、
霧や煙に覆われた憂鬱が、私の魂をおそう。
陽は日没を迎えるというのに、さあ面影よ、姿をあらわせ。
私の記憶から、遠く遠ざかった日々を数えながら。

臨終には、せめて私の日没が、日の出となることを
私の想いが、あなたの水平線上を、一番新しい色で満たすように、
至る所で、タンブル(弦楽器)が奏でられ、葦笛が響き渡るように、
臨終の時には、せめて私の日没が、日の出となるように。

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