夜の礼拝に起きられた際

夜の礼拝(タハーッジュド)に起きられた際は次のお祈りをされた。

「アッラーよ、あなたに感謝いたします。あなたは天空と地とその間にあるものを支えられる(アル・カイユーム)、永遠にあり続けられるお方であられます。あなたに感謝いたします。あなたは天空と地とその間にあるものの真の持ち主である王であられます。あなたは天空と地とその間にあるものの光であられます」[1]

夜半、このお祈りが唱えられることは非常に意味深い。天空は、夜に華麗に見える。星たちがまたたき、人の心に大きな影響を与える。地も、同じように自らを見せている。その壮麗さ、豪華さ、調和のうちに天空と地上を保たれるアッラーに、このようなお祈りで感謝が捧げられているのだ。

〔アル・カイユーム〕というアッラーの美名は「自足にあり続け、他のものを支えられるお方」という意味で、多数の人においてアッラーの美名の中で最も重要な美名の一つとされている。預言者ムハンマドはアッラーに感謝を捧げられる際、何度もこの美名の顕現のとりなしをされつつ、感謝されているのだ。

この世の富や資源もアッラーのものである。だから支配者も王も唯一アッラーのみである。

預言者ムハンマドのこの確信の言葉、この結びつきに注目してほしい。二、三時間前に誓いを新たにして眠りに入られたばかりなのである。起きられる時にも何よりも最初に再びその誓いを新たにされるのだ。なぜなら、眠りのうちにさまよった世界から、もといたところに新たに戻ってきたのであり、だからこの確証の言葉をも新たにしなければならないのである。

それから同じお祈りを次のような形で続けられた。

「あなたに感謝いたします。あなたは真実の存在のお方(アル・ハック)であられます。あなたが約束されることは真実で、あなたの元に到ることも真実です。あなたの言葉も真実です。預言者たちとムハンマドは真実です。最後の審判の日も真実です。

アッラーよ、私をあなたに委ねます。あなたを信じます。私の信頼はあなたに向けられたものです。全ての存在をかけてあなたの方に向きを定めています。ただあなたの援護によって、戦ってきました。ただあなたの裁きに委ねました。私の過去と将来における罪をお許しください。(将来において私に罪を犯させないでください、罪の扉を私に対して閉ざしてください)隠して行なったことも、隠さずに行なったことをもお許しください。そしてあなたが私よりさらによくご存知であられる私の罪をもお許しください。(なぜなら私は自分の心に浮かんだことを知っておりますが、秘められた深い部分の心をよぎるものは知ることができないかもしれません。もし、気がつかないうちに私の思いによくないものが芽生えていれば、どうかそれをお許しください。)前進させるのも置き去りにされるのもあなたであられます。あなたの他には神は存在しません。力と強さはただアッラーのものです」[2]

〔アル・ハック〕という言葉で表現されているのはアッラーであるに違いないという事実から、その言葉で最初に連想されるのはアッラーとなる。預言者ムハンマドは、必然的な真実の存在であられるアッラーからもたらされる全てが真実であることを、このお祈りで朗々と語られておられるのだ。

床に入る前に、アッラーに御自身を委ねることを表明され、眠りから覚めるや否やまた新たにそれを示され、かつ信仰をも表明しておられるのだ。新しい生を、このような信仰と深い承諾の意識と共に始められるのである。そしてこのお祈りを「ラ-ハウラ ワ ラークゥッワタ イッラービッラーフ」(アッラーの他、何の権力もなく、能力もない。アッラーこそ至高至大である)と締めくくっておられる。なぜなら人はアッラーの力と強さに頼らなければ、その肩に乗せられている重い荷物に耐えることはできない。信仰、信頼、自らを委ねるといったことは、アッラーが望まれた場合に実現することである。望まれない限り、援助なされない限り、誰がアッラーを知ることができようか。だからこそ人はそれぞれ自分の段階に応じて、アッラーの力と強さに庇護を求めなければならないのだ。

預言者ムハンマドはこういった思い、考えのうちに、このような精神的雰囲気をもたらされ、その後で礼拝を始められる。夜の闇を、その涙によってぬらされたのだ。

預言者ムハンマドは特に、お一人で行われる義務でない礼拝(ナーフィラ)において、多くのお祈りをされ、礼拝も非常に時間をかけてなされた[3]。礼拝を始められる際、開端章より前に次のお祈りを唱えられた。「アッラーよ、あなたが恵まれたものに妨げとなるものはありません。あなたが妨げられたものを与えることのできるものもありません。あなたの決定されたことは翻されることも、変えられることもありません。あなたに対して、どのような名誉の持ち主であれその名誉は意味を持ちません」[4]

このお祈りに続けて、次のお祈りを加えられることもあった。「アッラーよ、私と罪との間を東と西を分けられたように分けてください。アッラーよ、私を過ちから、白い服がしみから清められるように清めてください」[5]

このお祈りにおける表現は、本という形でやっと説明されるものである。私は説明すべき言葉も見つけられない。お祈りの王もただこのお方である。

この後、普通の礼拝のはじめにする〔スブハーナカ〕というお祈りを唱え、アッラーが欠けるところの全くない完璧なお方であることを賞賛され、その後やっと開端章を始められるのだった。この二つのお祈り間に預言者ムハンマドがなされたお祈りはまだ多数あるが、それらに関してはお祈りの本を参照にしてもらうことにし、ここではこの位でよしとさせていただく。

 


[1] Buhari, Tahajjud 1, Tawhid 8,35; Musnad I/358
[2] 同じ
[3] Buhari, Tahajjud 16; Muslim, Musafirun 125, 203-204
[4] Buhari, Daawah 18; Muslim Salat 94; Tirmidhi, Salat 108
[5] Bukhari, Azan 89; Muslim, Masacid 147
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