ワラア(自制)
ワラアは自分自身を不適切なものや不必要なものから遠ざけることと定義されています。宗教的に許されていないものや禁止されているものを厳格に避けることや、禁止された行為を犯してしまわないように、疑わしいことをすべて慎むということと同じような意味を持ちます。ワラアの基本は、イスラームの原則「疑わしいと思うものは避け、疑いのないものを好みなさい」や預言者のハディース「何が許されているかは明らかであり、何が禁止されているかもまた明らかである」によって説明されています。
スーフィーの中にはワラアを、イスラームの教義の真実に対する確信や、自分の信仰や行為において率直であること、イスラームの戒律を遵守することにおいて揺るぎなくあること、アッラーとの関係において非常に注意深くあることと定義する人たちがいます。他にも、一瞬たりともアッラーに対して不注意にならないことと定義する人々や、また、永久に自分自身をアッラー以外のものに対して閉ざすことや、アッラー以外のものに対して(何かが必要であるからなどの理由で)自分自身を下げないこと、自分のエゴ、自分自身の世俗的な側面、世俗的欲求、世俗それ自身といったものに惑わされずにアッラーに辿り着くまで前進し続けることと定義する人々もいます。
人々に対し請い願うことは常に避け、
最も寛大な御方アッラーのみに対し請い願いなさい。
この世の華やかさや豪華さを放棄しなさい。
それらはやってきたのと同様、疑いなく去っていくものである。
ワラアはまた、無用で儚い束の間のものの本質を自覚して行動する中で、必要で役に立つものに従事することに自分の人生の基礎をおくこととも解釈できます。ハディースでは次のように述べられています。「自分自身にとって無用なものは捨てるというのは、良いムスリムの美しさである。」
パンドネームの著者、ファリド・アル=ディン・アル=アッターはこれを美しく説明しています。
ワラアはアッラーに対する畏れを引き起こす。
ワラアを持たない者は屈辱を受ける者である。
まっすぐにワラアの道に従うものは誰でも、
その行いはすべてアッラーのためのものである。
アッラーの愛と友情を求める者でも、
ワラアを持たなければ、本当に愛を求めていることにはならない。
ワラアは信仰する者の人生と行為の内面と外面の両方に関係します。ワラアの道の旅人は既にタクワの頂点に辿り着いていなければなりません。その人生はシャリーアの命令と禁止を厳格に遵守していることを反映していなくてはならず、その行為はアッラーのためでなければならず、その心や感情からはアッラー以外のものはすべて取り除かれていなければならず、そして"隠された宝物"と共にあることを常に感じていなければならないのです。
言い換えると、その道の旅人は、自分自身をアッラーへと導かない思考や想像は捨て、自分自身にアッラーを思い出させない状況には執着せず、アッラーについてではない言葉には耳を傾けず、アッラーに喜ばれないことはしないと言えます。そのようなレベルのワラアによって、人は直接素早くアッラーのもとへと辿り着くことができるのです。アッラーは預言者ムーサーに対して言われました。「私の近くに来ることを望む者は、ワラアとズフド(禁欲主義)よりもそのために良い道を見つけることはできていない」
広く人々に知られているワラアは預言者の教友たちに続く世代の人々に目撃され、ほとんどすべての信仰する者の目標となりました。ビシュル・アル=カフィーの妹がアハマド・イブン・ハンバルに尋ねたのはこの時代のことでした。
おぉイマームよ。私はいつも夜に家の屋上で糸を紡いでいます。そのとき、数人の役人たちが灯を持って通りかかり、不本意ながらも、私はその灯の光から利益を得てしまいます。これは宗教的に非合法な方法で得たものを自分の所得に混ぜてしまっていることになりますか?偉大なイマームはこの質問に対し激しく涙を流し、答えました。このようなほんの些細なことであっても、疑わしいものは、ビシュル・アル=カフィーの家に入れてはなりません。
禁じられたものに一瞥を投げたことに人々が一生涙を流し続けたのも、禁止されたものの欠片を知らずに食べ、それを吐き出した人が、何日も嘆き悲しみ続けたのもこの時代のことでした。偉大なハディース学者で禁欲主義者のアブドゥッラー・イブン・ムバラクの伝えるところによると、誤って自分のポケットに入れてしまったものをその持ち主に返すためにメルヴ(アフガニスタン)からマッカまで旅をした人がいたと言います。フダイル・イブン・イヤドのように、借りがあると考えた人に対して一生をかけてそれを返し続けた人はたくさんいました。アブー・ヌアイム・アル=イスファハニによって書かれたヒルヤト・アル=アウリヤ(信仰深い人々の首飾り)やイマーム・アル=シャラニによるアル=タバカ・トル=クブラ(最も偉大な概論)などの信仰の深い人々の伝記には、このようなワラアの偉人の話がたくさん載っています。
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